印刷をするうえで環境に少しでもよいものにしたいが、具体的にどういうことができるのかわからないというお話を聞きますので、整理してみます。
印刷に関わる環境の課題
印刷をするうえで影響が出てくる環境の課題とその対応方法の概要としては下図のようになります。
発注者中心が○となっているのが発注者が中心になってコントロールできる範囲です。
森林伐採
紙は木を切って作っているものだから、環境に悪いという話がありますが、必ずしもそうでもなく、伐採すること自体が問題ではない?森林伐採と温暖化との関係でも書いたとおり、管理されていないで伐採され森林がなくなっていくことが問題で、管理されていれば問題ありません。
とはいえ、かつてオーストラリアの原生林が日本の紙消費のために伐採されていたということもあるようなので、日本の紙は森林減少に対して悪影響は全くないと言い切っていいかはわからない部分もあります。
そういう意味で、管理された森林から取れた紙であるということが第三者機関で認証されているFSC認証というものがあるので、そういった紙を利用するというのが一つの方法です。こちらの認証についてはまた別記事で詳しく説明したいと思っています。
また、そもそも新しく作る紙ではなくリサイクル紙を作るのももちろんよい選択肢としてあります。
印刷過程でのCO2排出量を減らす
チラシの印刷による二酸化炭素排出量はどれくらいかの記事で書いた通り、印刷に関わる二酸化炭素排出量は大半が紙の製造にかかるもので、概算でA4の紙1枚で6.53gの二酸化炭素が発生していることになります。
なのでそんな金額が変わらないなら多めに作ろうというのではなく、必要な量を作る、少し間違えていたからといって値段がそんなにかからないなら全部印刷し直しといったことをしないなど、発注者側が意識するだけでも印刷数は減らすことができます。
印刷時の有害物質を減らす
印刷時出る有害物質を減らすことで環境によりよい対応をすることができます。例えば「水なし印刷」という印刷方法があります。通常のオフセット印刷だと「湿し水」という水が必要となるのですが、それには有害な揮発性有機化合物が入っているのですが、それを使わない印刷の手法があります。
他にもインクでNON VOCインキという揮発性有機化合物(VOC)を含まないものなどもあるので、発注者側としてできることはそのような対応ができるか印刷会社に確認していくことが必要になります。
紙のリサイクルの品質を上げるには
紙をリサイクルするのは紙を溶かして、ゴミを取り除き、インクを取り除き、漂白をするという工程になるのですが、紙の種類や使うインク、加工方法によってはリサイクルの品質が悪くなるため、デザイン時点からそのことを考慮する必要があります。
リサイクルを阻害せず、まるごとリサイクルできるリサイクル対応型印刷物というものを印刷業界が検討し、古紙リサイクル適正ランクというものを作成しています。
パンフレットでよく表紙を丈夫に、見栄え良くするためにラミネート加工をしたいというような話もありますが、そうすると古紙リサイクル適正としてはBランクとなり、紙のリサイクルには適さなくなってしまいます。
専門的な用語も多いので印刷会社と協力をしながら、デザインの段階からリサイクルされることを考慮したデザインにしていくのが望ましいです。
参考資料
JATAN NEWS No.49 オーストラリアの天然林伐採の中止と植林木の利用を訴える
日本WPA(日本水なし印刷協会) : 水なし印刷について: 水なし印刷とは?
古紙の再生工程 紙のリサイクル|紙の豆知識|日本製紙グループ
リサイクル対応型印刷物 – Recyclable Prenting Materials –