紙での印刷は環境に負荷をかけているという印象はあるものの、実際にはどれくらいの影響があるのでしょうか。どれくらいの排出量があるのか、発注側の視点として持っておいた方がいいことはどんなことがあるでしょうか。
サマリ
チラシなどの印刷によって発生する二酸化炭素の大部分は紙の製造にかかる分になります。よく使われるA4サイズのコート紙(90kg)という紙の製造で1枚6.53g。印刷が身近になった今、チラシ1,000枚でも2,000枚でも値段は2,000円程度の差で作れますが、環境への負荷は倍であることは発注側として知っておいた方がよさそうです。
チラシ印刷で発生する二酸化炭素量
印刷の際に発生する二酸化炭素量を紙の製造時と印刷時という形で分けて計算してみます。
紙の生産で発生する二酸化炭素量
日本製紙連合会が発表している紙・板紙のライフサイクルにおける CO2排出量を参考に、紙の製造時に発生している二酸化炭素量を見てみます。
よく使われている紙がコート紙というものなのですが、1トン製造するために、1,620㎏の二酸化炭素が発生しています。1㎏の紙を作るのに1.62㎏の二酸化炭素が発生するということです。
チラシでよく使われているのがコート紙90㎏(特定のサイズの大きい紙が1,000枚束になったときに90㎏になることを表します)という紙です。A4サイズ1枚にすると、6.53gになります。
例えば1,000枚であれば紙の重さが6,53kg、2,000枚であれば13.06kgなので、先程の1㎏の紙を作るのに1.62㎏の二酸化炭素の発生で計算すると、
1,000枚で10.58㎏、2,000枚で21.16㎏の二酸化炭素が発生しています。
印刷する際に発生する二酸化炭素量
一般社団法人日本印刷産業連合会が発表している印刷業における地球温暖化対策の取組を参考にすると、2012年時点で市場規模の56%(売上30,874億)を占める企業群からの排出量が122.49万トンです。
これから都度の印刷で発生する二酸化炭素量で計算をすると、上記リンク資料から
エネルギー原単位は、エネルギー使用量/売上高で表している。当業界は様々な様態・形態の製品を製造しており、製品数量や重量とエネルギー使用量が比例関係にない。そのため、エネルギー原単位は、エネルギー使用量と比較的相関性の強い売上高を活動量として採用している。
といっているので、売上に比例して二酸化炭素が発生すると仮定します。1万円の売上あたり3.975kgの二酸化炭素が発生していることになります。
例えばネット買える激安の印刷会社プリントパックさんで、A4の両面カラーのチラシが1,000枚で2,810円、2,000枚で4,530円からです。
この金額は激安ではあるのですが、先ほどの式で計算すると、チラシ1,000枚の印刷で1.12㎏、2,000枚の印刷で1.80㎏の二酸化炭素が発生することになります。
チラシの印刷で発生する二酸化炭素量合計
紙の生産と印刷での発生二酸化炭素量を合わせると、A4チラシをコート90㎏という紙で両面カラーで印刷すると、
1,000枚で11.7㎏、2,000枚で22.96㎏
の二酸化炭素が発生していることになります。
印刷発注者として持つべき視点
チラシ1,000枚作成しても2,000枚作成しても印刷の値段はほとんど変わらないです。そのため対して値段が違わないなら余ってもいいから多めに作っておこうという判断をされることが多いです。
でも発生する二酸化炭素量としては1,000枚で11.7kg、2,000枚で22.96㎏なので1.96倍になります。
印刷の部数の変動による価格の推移と発生する二酸化炭素量の推移は下図のようなイメージになります。
紙だからこそより伝わるということはあるので、印刷をすることは必要ではありますが、発注者の視点に環境という軸があれば、念のための2,000枚ではなく、必要な1,000枚となるのではないでしょうか。