世界の森林は2000年から2010年までの平均で毎年520万ヘクタール、1分間にしたら東京ドーム2つ分の森林が消えています※1。その問題に関連した世界での話やそれをコントロールすることができるのか。森林資源を利用している側としてどうしたらいいかを考えてみたいと思います。
インドネシアで大量の森林が伐採される構造的な問題
参加しているサステナビリティーカレッジでレインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表 川上 豊幸さんのお話を伺う機会がありました。
https://note.com/sus_college/n/nc5cc6f2c0318
インドネシアでは北カリマンタン州と東カリマンタン州の2つの州で825万ヘクタール以上の重要な熱帯林が依然として危機的状況にあると言われています※2
キープ・フォレスト・ スタンディング ボルネオ森林フットプリント評価2021
色々問題はあるのですが、構造的に一個大きな問題があります。
インドネシアが元々植民地だったこともあり、森林の土地は政府が保有しています。
そのため、政府が大規模に企業に割り当てることができる
という点です。
それぞれの人が土地を持っていたら、大きい面積を取得するのは大変ですよね。
しかし、まとまった面積を政府が持っているから、政府から許可が降りれば開発ができる。
この構造になっていることから、かなり大規模な伐採を行うことができます。
カナダで国が報告している伐採量と現実が7倍以上違う
続いてはカナダについてです。
カナダでの森林伐採状況の調査をしたところ、カナダ全体の伐採量の17%を占めているオンタリオ州で発生している伐採の量が政府が発表されているカナダ全体量の7倍にも及んでいた
という報告がされています。※3
道路や道路脇で丸太の商品性のあるものかどうかを分けるための場所が結構な面積を占めていて、それが毎年21,700ヘクタール分が伐採されている。
CANADA UNDER-REPORTING DEFORESTATION & CARBON IMPACTS BY FORESTR
単純計算でカナダで報告されている数量の41倍(全体の17%が7倍とすると100%になると単純計算で41倍)にもなる可能性があるということかと思います。
もし「カナダほど厳しく森林伐採を管理している国は無い」とみんなが信じて利用していたらどうでしょうか?
そのことを表している内容として、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)が製紙業界への公開質問をしているページに以下の情報がありました。※4
植林問題の新聞広告に関しての日本製紙連合会向け質問書
質問
この広告に出ておられた前会長の会社が資本参加されているカナダBC州のCrestbrook ForestIndustries社、Howe Sound Pulp&Paper社の場合、周辺の原生林などの皆伐を行っていることや、環境汚染がかなりひどいことが伝えられていますが、どのようにお考えでしょうか。
回答
カナダでは州政府によって森林施行規則や年間許容伐採量が決められており、その体系の下で木材生産が行われております。また同国の環境規制は世界でも最も厳しいものでありますが、両社とも適切な環境投資を行い、これらの規制値を十分にクリアーしていると聞いております。
植林問題の新聞広告に関しての日本製紙連合会向け質問書
上記太字にした部分は日本人が持っていそうな「カナダは大丈夫でしょう」というようなイメージにもあっているのではないでしょうか。
国が定めている伐採量よりも輸出量の方が多い国も?
他の国でも違法に伐採されているものが多く存在するようです。
違法伐採の木材は輸入国に入る時に、なぜか合法木材になっている場合が多い。ロシアでは、国が定めている伐採量よりも多い木材が輸出されているから、違法伐採になるはずなのだが、なぜかすべての木に地方行政区などが発行する合法証明書がついてくると言われている。※5
速水享 日本林業を立て直す 速水林業の挑戦より
このように、世界全体の森林伐採の状況に関して、正しいと思われている情報すら正しくないかもしれない。というのが今の現状と考えていた方が良さそうです。
嘆くよりは自分達がやれることをやろう
ここでは構造的に伐採しやすいことになっている国や、間違った情報を出す国を責めるという意図は無いです。
こういうことは起こりえるということを知っておいたうえで、コントロールできない難しさを嘆くのではなく、小さいことでも自分たちがコントロールできることをするというのが大切なんじゃないでしょうかというのがお伝えしたいことです。
間違いなく変えられることの一つとして、「利用する量を減らす」ことがあります。
最終消費者であれば、利用する量を減らすことができますし、森林資源を利用している企業であれば、資源の利用量を減らすことができる設計にできないか考える方法もあります。
例えば紙であれば、森林資源を利用する量をできる限り減らすという観点で紙や印刷方法を選ぶことができます。
そのための選び方についてこちらで紹介しているので参考にしていただければ幸いです。
参考資料
※2キープ・フォレスト・ スタンディング ボルネオ森林フットプリント評価2021 Rainforest action network 2021年11月
※3 CANADA UNDER-REPORTING DEFORESTATION & CARBON IMPACTS BY FORESTRY Wildlands League 2019年12月
https://loggingscars.ca/wp-content/uploads/2019/12/LoggingScarsPressReleaseFinal.pdf
※4植林問題の新聞広告に関しての日本製紙連合会向け質問書 森林行動ネットワーク 1998年12月
http://www.jatan.org/lib/jpa1.html
※5 速水享 日本林業を立て直す 速水林業の挑戦 日本経済新聞出版社