環境による対応をする際に一番に取り掛かるとよいものとして言われているのが廃棄物ゼロです。その進め方はどうするとよいのかカーペットの会社インターフェースの事例を元に紹介します。
インターフェース社の廃棄物ゼロへの取り組み
この本に事例として詳細にかかれている内容を紹介します。
このサイトをつくるきっかけになった3冊の本にも最初に紹介したのですが、カーペットのインターフェースという会社は1994年からMission Zeroとして2020年までに環境への悪影響をゼロにするという試みを徹底してやっている会社です。やっている内容として、廃棄物ゼロ・環境に悪影響を与えない排出・再生可能エネルギーの利用・循環型リサイクルの実現・資源効率のよい輸送・ステークホルダーの巻き込み・新しいビジネスモデルなどのことをしているのですが、一番最初に取り組んでよかったこととして、廃棄物ゼロ化があります。
なぜいいかというと、具体的にコスト削減ができるから。それをやることで直接的に利益につながるため、例えば上場会社であれば外部に対しての説明にもつながります。
どれだけの効果がでているかというと、1994年から初めて最初の3年間で、6,700万ドルのコスト削減、2004年には累計で2億6,200万ドル、2008年には累計で4億ドルものコスト削減効果を生んでいて、それ以降の対応(再生可能エネルギーの利用など)のための投資を産み出すことができるようになっています。
具体的にはどのように進めてきているのでしょうか。
廃棄物の定義を決める
まず、何を削減するのかという認識を社内で合わせるために廃棄物の定義をしています。具体的には
お客様への価値を産まないすべての生産物を廃棄物とする
といった形で決めています。品質の悪いカーペットや、スクラップだけではなく、誤配送や間違ったインボイスなど管理系の失敗などもすべて廃棄物として定義しています。
また、途中から、
化石燃料から得られる全てのエネルギーも廃棄物
として追加しています。
廃棄物として削減するパターンとして以下のような分類で取り組んでいます。
- どれだけ素材・原料を有効に使えるか
- エネルギー利用をどれだけ減らせるか(特に化石燃料)
- どれだけ非生産的な活動やコストを減らせるか
そのうちの一番上がやはりインパクトが大きいので、素材をいかに有効に使えるかということを意識する必要があります。例えば、ロール状のものをカットする際にまっすぐ機械に入れることができればその分ロスを減らすことができ、それで1インチ減らすことができたとします。一回の量でいうと1インチは大した量ではないけれども、全社での生産量を考えれば、20階建てのビル全部の床にフロア分にはなると。そして、さらに認識する必要があるのは、似たようなことを産業部門(製造業)での二酸化炭素排出量を減らすためのステップでも書いたのですが、製造段階で生産量を1減らせるとしたら、元の材料の投入エネルギーは10減らすことができることになります。
自社の削減がバリューチェーンの上流の材料段階の原料削減・エネルギー削減につながるということを認識している必要があります。
実際に4%のナイロンの利用量を減らしただけで、ナイロンをつくっているデュポン社でインターフェース社の全工場の半年分のエネルギー利用量を減らすことができたという試算も本の中にはのっていました。
廃棄物ゼロ化のためのフロー
では廃棄物をゼロにするためにはどのようなフローで進めていく必要があるのでしょうか。
- 廃棄物の定義をする
- 定義した廃棄物を正確にフェアに測る方法を決める
- チャレンジングで到達可能な年次のゴールを決める
- 全員が見えるような形で共有する
といった流れで進めています。
リーダーシップがとても重要でトップがビジョンを示すことが必須ではるのですが、実際に削減するのは現場の人ではないとアイデアが浮かばないため、QUEST(Quality Utilizing Employee’sSuggestion and Teamwork)という現場でアイデアを出し実現していくという体制をつくり、各工場などの現場で毎年10%の削減をしていくという形をとっています。
よく現場でありがちな、「標準的な」廃棄物、「容認できる」不良率などを認めず、ゼロを目指すということが重要です。
また、廃棄物をすべて金額ベースで測るようにするという点も重要なのですが、ここは結構難易度が高そうだなという印象はあります。
廃棄物ゼロに向けたマネジメントの仕方
前述のQUESTをまわしていくために、重要だったポイントして本書では以下があげられています。
- マクロで見るがマネジメントはミクロで行う
- アウトプットに対しての割合で達成を管理
- ユニットあたりの廃棄物のコストを暦年で管理
- 他の状況も見れるようにはするが、比較は自組織のみとする
- 全体で成果を共有する
このあたりの方法は管理手法として色々な現場が関わるプロジェクトでの管理方法として参考になりそうです。
また、QUESTの達成状況によって報酬を出すという方法をとっているのですが、最初はマネージャーのボーナスおよびメンバーのボーナスを10%達成したかどうかで決めていたそうですが、それが機能していなかったので途中でやめたそうです。
というのもどんなにリーダーシップをとって廃棄物をゼロにしようといっても全く動かない人はいて、その人達は自分の給与明細をみてお金が増えたかどうかしか気にしていないと。なので、アイデアを出した人を中心に報酬を出すという方法に変えたそうです。
具体的な削減例
具体的にコスト削減につながった例もたくさん載っていたので一部紹介します。
材料やエネルギー等の利用量をいかに減らせるかというのが重要になってくるので、例えば
- カットする機械に必ずまっすぐ入るようにするというだけでも大きな削減ができた。
- 製品の設計を見直して、表面の糸の巻き数を少なくて済むようにする
- ノズルを変えるだけで水の利用量を大きく減らすことができた
など。日本企業では削減・改善が得意なので、すでに削減できるところまではやりきっているという会社も多いのではと思いますが、少しだけでも良くしようというのとゼロにしようという視点ではやることが変わってくると思いますので、再度トライしてみるのはいいかもしれません。
参考資料
レイ アンダーソン(著),枝廣 淳子 (著), 河田 裕子 (著)パワー・オブ・ワン―次なる産業革命への7つの挑戦|海象社 (2002/1/1)