日本での産業部門(製造業)での二酸化炭素排出量は全体の28%を占めます。その領域での二酸化炭素排出量を減らすためにはどのような対応を取ればよいでしょうか。
この本の中に体系的に書かれていた内容を中心にご紹介します。
製造業での二酸化炭素排出量を減らすためのステップ全体
二酸化炭素排出量を減らすのはすなわち製造業におけるエネルギーの量を減らすこととほぼ等しくなります。そのためのステップとしては、
- 工業のプロセスを動かすのに必要なエネルギーを削減・節約する
- システム内のエネルギーの損失を削減する
- ボイラーやモーターなどのデバイスの効率を上げる
- 今無駄に使われているエネルギーを有効に使えるようにする
といった長れになります。
それぞれが具体的にどのような内容なのかを説明していきます。
必要なエネルギーの量を削減・節約する
一般的な工場でよく利用されているポンプシステムのエネルギー消費は下図のようになっています。つぎ込んだエネルギーが100単位に対して、実際に使われるサービスに使われるエネルギーは9.5単位しか無いということになります。約10分の1に減るということです。
この流れを逆にとらえると、最後に必要となるエネルギーが1単位削減できれば、元の投入エネルギーとしては10単位程度削減につながることになります。なので、常に末端での利用を最小限に節約できないかという観点で見ていくことが、必要なエネルギーの減少において大切になります。
言われてみると当たり前なのですが、私には無かった視点でとても重要な考え方だと思います。
エネルギーの損失を削減する
紹介した新しい火の創造の中にある例で、ポンプとパイプでの損失が無いように変えることで必要なエネルギー量を13%程度にまで減らしたものがあります。
カーペットのインターフェース社での事例で、主に行ったことは2点。
- 太いパイプと小さなポンプを採用したこと
- パイプの配置を摩擦の少ない配置にしたこと
です。
1点目については、
太いパイプのコストは直径の2乗に比例して大きくなるが、その摩擦はほぼ直径の5乗に比例して下がる
という事実から、直近のかかるコストではなく、エネルギーの効率を優先する判断をした結果下げられたもの。
2点目は、一般的にパイプは直角に接続されることが多いけれども、それが摩擦を増やす原因のため、なるべく摩擦の無い角度で接続するということ。
上の図の左側が一般的な配管デザインで、右が効率的なものです。これを実現するために、まずはポンプを理想的な配置にすることから設計をスタートしたそうです。
なぜこのような非効率な設計がずっと続いているかというと、伝統的に直角配管が好まれるし、費用は作業時間で払われるから長い方がよく、余分のパイプと継ぎ手で利益も出せるという背景があるのだと書かれています。
根本的な変更なのですぐに対応できるものではないですが、多くの工場で見直しができるポイントなのではないでしょうか。
ボイラーやモーターなどのデバイスの効率を上げる
モーターは工業向け電力の5分の4を使う
と言われているようです。そして、多くのモーターが必要以上に大きすぎて、エネルギーの無駄遣いをしています。しかし、モーターには今幾らお金がかかっているかというタクシーのメーターがついているわけでもないので、誰も気にせず、必要以上に大きいものがそのまま使われているのが現状です。
回転数を変えることができるモーター制御を追加するだけでエネルギー消費量が15〜30%削減ことが多いです。
環境省が出している産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針の中でも、回転数を制御するインバーターの導入で大きく削減できた事例が載っています。
今無駄に使われているエネルギーを有効に使えるようにする
製造業における設備では、無駄になるエネルギーが多く、一度加熱したものを廃棄が許される状態にするために冷却し、処理するのにさらにエネルギーを使う、処理する場所が違うので移動した後に再加熱するなど、無駄が多いのが現状です。
無駄にしない方法として最も効率的と言われているのが、発電に付随して出た大量の熱を捕捉する熱電併給(CEP)というもの。
これらを各会社が見直すことで産業部門(製造業)でのエネルギー消費量、ひいては二酸化炭素排出量の削減につながっていきます。
参考資料
エイモリー・B・ロビンス (著), ロッキーマウンテン研究所 (著), 山藤 泰 (翻訳)|新しい火の創造 ダイヤモンド社 2012
環境省 地球環境局 地球温暖化対策課|産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針
全国地球温暖化防止活動推進センター|日本の部門別二酸化炭素排出量(2015年度)