トイレットパーパーと自分が仕事でやっていること

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このブログでも度々取り上げているポール・ホーケンさんの新著が出ていたので相変わらず素晴らしい本だったので、まず本の中で印象的だった北方林とトイレットパーパーについて書いてみます。

北方林とはなにか

北方林というのは東南アジアや南米の森林熱帯雨林に対して、北欧や北米、ロシアなど、寒い地帯での森林のことを言います。

森林の中でも、土壌に含まれている炭素の量がとても多いです。寒いエリアなので、植物や生物が腐るまでに時間がかかり、泥炭地にすることができ、そこに炭素が貯められています。

1兆1,400億トンもの炭素があると言われています。二酸化炭素換算にしたら4兆1800億トンでしょうか。

みなさん木を切って燃やしたりしたらその分だけ炭素が排出されてしまうと思ってないでしょうか。

そうではなく、木が切られることによって土壌が乾燥して、木を失う以上の二酸化炭素が発生します。また乾燥することよって山火事も起こりやすくなるなど他の事象も発生します。

1本切ったら1本植えたらいいという話ではない

またこの本を読んでいてそうだったか!と思ったのが下記です

Now we know trees accumulate significant amounts of carbon to almost the end of their long lives

今まで、古い木はほとんど炭素を貯留しないと思われていたのが、全然そんなことはなく、むしろ上記引用のように、最後に大半を貯留するというのです。新しい木の40年分は貯留量があるため、単純に1本切ったら1本植えたらいいよねという話では全くないということです。

どんな対策よりもまず北方林を守ることの方を優先したいというふうに書かれていました。

トイレットペーパーと北方林

そんな背景があるなかで、北方林が伐採される大きな原因の一つにトイレットペーパーで、拭き心地のよい高級トイレットペーパーをつくるための原料としてよく使われているということでした。

それらの会社が北方林を伐採して、単一種でプランテーションをしてるけれども、それによって生態系も崩されているという問題が起きているようです。

トイレットペーパー問題の構造的な難しさ

このトイレットペーパーの問題には環境の話によくありがちな難しさがあると感じてます。

それを感じたニュースとして、2022年2月10日の日経新聞に「再生トイレ紙 波乗れず、巣ごもり需要 肌触り良いパルプ品にシフト」という記事がありました。再生紙のトイレットペーパーが在宅ワークで家にいるから、家にいる間はいい紙で拭きたいというニーズが高く、パルプ品が売れてるというニュースでした。

少し一般化した話になるのですが結局は、

  • その問題自体を知らない
  • 自分の領域が狭い
  • 価値観の問題

ということが問題が解決しない原因としてあげられると思っています。

その問題を知らないというのは、拭き心地を重視することで、そこまで大事な森林の木を切ってトイレで使ってるとまでは思いもしなかったという話。それを知ることで行動が変わる人もいるかもしれない。

自分の領域が狭いというのは、例えば車の中からポイ捨てをする人は車の中までは自分の領域で、その外はどうなっても知らないという考えなわけだと思います。もし道も自分ごととして捉えている人だったら、ゴミを捨てるというのはしないはずですよね。これを自他の境界を無くすという言い方をしたりしますが、そのような状態になっていくと、人はみんなやさしくなれると思っています。

価値観の問題について。トイレットペーパーでいえば、超簡単なトイレットペーパーの利用量を半分にする方法があります。それは、毎回使うトイレットペーパーの量をいつもの半分にすることです。グルグルって回してたら、グルにする。でもそれってできますかね?そんな少ない量で手が臭ったらどうするんだと思う人もいるかもしれません。

その前提には例えば清潔感や匂いに関してのこだわりがあるでしょうか。

なんでそんなにその匂いが嫌いなんでしょう。

私以前パリに行ったときに、ある種の憧れをもって行ったのに、なんか臭うなと思った記憶があります。パリ、におうと検索すると同じようなことを感じてる人がよくいるので同じような人もいるのかもしれません。でも色々自分の価値観と向き合う中で、匂いに対しての過度な反応があることにも気づいていったので、その感覚がゆるくなっていきました。おかげて子どものトイレの後のおしり拭くのもくさいな。。と毎回ストレスを感じながらすることもありません。そういう状態の人だったら紙を使う量をへらすということも自然とできるのかもしれません。

提供する企業ができること

ユーザーの意識が変わっていなかったとしても、提供する企業が先にこだわるというのはとても重要になってくると思います。私がよく出すアップルの例なのですが、彼らは製品の箱に利用する資源の量を減らしていくという方針を決めています。

会社を経営している人が自分たちの考えをしっかり見つめて、自分たちだけよければいいのではなく、自他の境界が薄れている状態になっているという言い方ができるかもしれません。

そういう考え方を会社の方針を決める立場の人ができること、それが今後とても重要になってくるのではと感じています。

製品の作り方という観点では、消費者の意識がみんな変わるのは難しいので、消費者がそのまま気にせず使っていても結果としていい方向になるというのが理想かなと思っています。例えば、そのような会社もありますが、トイレットペーパーの幅を狭くする。それだけで資源の利用量はだいぶ減ります。

そして意識の高い消費者の方に伝わるようにしっかりと自分たちの考え方をPRするとよいかもしれません。

自分が仕事でやっていること

ここまでの話をまとめると、この問題を解決するのに必要なアプローチとしては、

  1. 消費者も企業も自分を見つめて価値観に気づいていく、自他の境界をなくしていくこと
  2. 起きている事象を知ること
  3. 企業がサステイナブルな意思決定をしていくこと

が必要になってきます。

それがまさに自分が今やっていることだなと思いました。

1に関しては私自身ここ数年ずっと心がけていることで、周りの人にはお伝えしています。

2に関しては最近全然できていませんでしたが、このブログのような情報発信で「伝える」ということをしていきたいと思っています。

3については経営している印刷の会社で印刷の観点からサステイナブルな意思決定のサポートをさせていただけるようにしています。

やりたいなと思ってることがやれてるんだなと思うと同時に、もう少しそれぞれ強化していきたいなと感じています。

参考資料

Paul Hawken Regeneration: Ending the Climate Crisis in One Generation Penguin Books 2021/9/21

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