ワインといえばフランスの名前が筆頭に上がりますが、生産量ではイタリアが世界一をキープしています。そのワイン大国イタリアでは他国に先駆けて、「サステナビリティ・ワイン」の認証をシステム化しようとしています。美味しいワインを生産するだけではなく、環境にも配慮したワインの生産に向けてイタリアは第一歩を踏み出しました。
イタリアとオーガニックワイン
そもそもイタリアでは近年、オーガニックな食材の市場が大幅な伸びを見せています。ワインももちろんそのひとつで、「オーガニックワイン」を名乗る商品はヨーロッパ全体の中でイタリア産が32%を占めています。
21世紀を迎えて20年、オーガニックワインの生産量は20世紀と比較すると3倍も増えました。ワインのトレンドを調査する「ワイン・モニター」の2018年度のデータによれば、オーガニックワインを消費する理由としては、
- 環境への配慮を評価するため 76%
- 健全性を評価するため 61%
- 信頼性があるため 50%
という答えが出ています。さらに、オーガニックワインの味わいや香りが通常のワインよりもよいと答えた人も43%にのぼり、今後もオーガニックのワインの消費は伸びを見せることが予想されているのです。
その延長線上に登場したのが、サステナビリティを意識したワインというわけです。
実はコロナ禍の影響は、ワイン生産業者をも直撃しています。特に「Horeca(ホテル・レストラン・バールなどの外食産業)」にワインを卸していた生産者たちへの影響は大きく、今後はワインも量から質重視へと転換していく可能性が指摘されています。つまり危機にある今こそ、より健全で質の良いワイン生産のためのチャンスというわけです。
そもそもサステナビリティとは?
昨今よく耳にするようになった「サステナビリティ」という言葉には、どのようなコンセプトがあるのでしょうか。
「オーガニック」とは、化学薬品に頼らずに有機物を活用して生産された農産物に冠する言葉です。
いっぽう「サステナビリティ」とは、環境保護や社会貢献をも視野に入れた経済活動を指します。つまり、利益追求一辺倒ではなく地球や子供たちの将来に貢献する経済活動というわけです。
農業王国であるイタリアでは早くから、このサステナビリティを意識した活動が展開されてきました。
特に世界に冠たる製餐旅を誇るワインとサステナビリティ認証については、イタリア農業食糧森林政策省がイニシアティブをとってプロジェクトが推進されてきました。イタリアでは1960年代からサステナビリティ(イタリア語ではSostenibilita`)という言葉は存在していましたが、昨年ワインの認証制度の導入が本格的に議論されるようになったのです。そして2020年7月27日、正式に法律化されました。「ワイン製造のあらゆる過程においてサステナビリティを向上させるため、製造プロセスにおける認証を制定する」とうたわれています。
サステナビリティのワイン、そのスタンダードとは
実は法律は制定されたものの、その条件についてはまだ議論の真っ最中。どのような形で栽培や製造をモニターするかなど課題は多数あります。今後は、農業食料森林政策省と環境省が合同で定義を定めていくようです。
サステナビリティを意識したワインの規範とは具体的にどのようになるのでしょうか。
まずは、空気、水、土を汚染しない生産方法があげられます。
まず空気に関してはもちろん、CO2の排出量を低下させる試みが求められます。エネルギー消費量が少ない機械や照明の使用などがそれにあたります。
水に関しては、ワイン製造プロセスでは特に汚染する工程は存在しません。ただし、ワインセラーでは清掃などのために大量の水を消費します。そのため、水のリサイクルや浄化装置がポイントになってくるといわれています。
土に関しては最もワイン生産との関連が深い分野です。有機肥料を使用しているか、土壌の肥沃度を確保できているか、バイオダイナミック農法を採用しているかなどが基準となってくるようです。健全な土壌で栽培されるブドウから生産するワインは当然美味しくなるわけで、土の健康は環境だけではなく経済活動のためにも必須といえるでしょう。
また、ワイン製造業が土地の景観面でも寄与しているか、労働者や地域コミュニティともよい関係を築いているかなど、社会貢献もサステナビリティに含まれます。
消費者もその対象で、ワインのラベルに張られたQRコードでブドウの栽培から販路までたどれる透明性などが条件になるようです。
サステナビリティを意識することによるさまざまなメリット
サステナビリティのワインを推進しているのはイタリアばかりではありません。
アメリカの一大ワイン産地カリフォルニアでは2010年、「California Sustainable Winegrowing AllianceIlprogramma」が設立されています。また、ニュージーランドでは2007年に「New Zealand Sustainable Winegrowing」が登場しました。もはや、この風潮は世界を巻き込んでいるといって過言ではないほど世界各地でこのような動きが顕著なのです。
ちなみにヴェネツィア大学が2015年に行った調査によると、過去2年間に売上高が増加したワイン製造業者のうち49%がなんらかの形でサステナビリティを意識していると答えています。そのうちの70%は、サステナビリティへの投資は売上高の面だけではなくさまざまな評価の点でもメリットが大きかったと解答しました。
サステナビリティを向上させることにより、コストが削減されたりプロセスにおける効率の改良が可能になることも多いことが報告されています。まさに経済と環境の絶妙のバランスを保持できるサステナビリティのワイン、今後の動向が注目されますね。
参照元
https://www.ilsole24ore.com/art/vino-sostenibile-uno-standard-unico-filiera-ACYmXG1