Don’t even think about it なぜ気候問題は難しいのかがわかる本

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気候変動などの環境の問題は重要な問題で昔から言われているのに、あまり状況が変わらなかったり、寧ろそういう問題について表立って意見すると奇異な目でみれるくらいの印象があります。なんでなのでしょう。その理由がわかれば対応のしようがあるかもしれない。

ということで、この気候問題がなぜ、存在しないかのように扱われてしまうのかを色々な観点から解説した本を紹介します。

サマリ

本書では色々な観点からなぜ気候問題について、タイトルどおり「考えようともしない」ことになるのかが書いてます。
自分自身が問題を起こしている点、明確な敵がいないといった問題の構造的な難しさ。
個人がやることのインパクトの小ささなどによる、モチベーションを保つ難しさ。
自分ごととして捉えづらいコミニケーションのとり方などが問題としてあげられています。
その結果、どうすればいいかわからないから周りの人がやってる通にするということになり、解決が進まない。という構造です。
この本の考え方は気候変動などによらず色々な問題に応用できそうです。

問題の構造の難しさ

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環境問題に関わる問題で見事に解決できた問題に、オゾン層の破壊の問題があります。地球の回りにオゾン層というものがあり、太陽からの紫外線をカットしてくれていて、それが無いと皮膚がんや白内障など様々な問題がおきます。そのオゾン層を破壊するものがフロンガスというものなので、その影響が少ない代替フロンガスを使いましょうということで世界的に決めて、短期間で解決しました。

そういった問題と何が根本的に違うのでしょうか。そもそもの問題の構造に難しさがありそうです。

自分自身が原因で引き起こしている問題

温暖化の問題は二酸化炭素などの温室効果ガスなのですが、それは人間が生きていくうえで必ず必要な電気を作る時だったり、車に乗る時だったり、農業の時だったりに出るもので、要は自分達自身が問題だということ。

よく環境について何かすべきといういう人は子どもに地球を残すために環境によいことをしましょうという言い方があります。私自身もそう思ったから環境問題について調べ始めたのですが。でもこの本にのっているアンケートでは、アメリカ、イギリス、カナダなどでしたアンケートでは、子どもがいる人の方が「気候変動の問題は起きていない」という回答をする人が多かったというデータが出ているようです。

人は自分が悪いことをしていると思って生きていると思いたくないので、そのような面には目をつぶる傾向にあります。ましてや子どもがいる人であれば、自分が大事な子どものために地球に悪いことをしているということをずっと思い続けるのはとてもつらいことなんだと思います。なのでより楽観的になって、問題を見ないようにする。

気候問題を話し合うために大量の人が飛行機に乗って集まるのはいいのでしょう?とか自分が矛盾していることをしていると思いたくないので、多くの人はこの問題から目をそらしてしまう。この構造が問題を難しくしています。

問題が大きすぎ、明確な敵がいない

また先程あげたオゾン層の問題であれば、フロンガスという特定のガスを使わなくすればよかったので、対応が用意でした。気候変動の問題に関しては、二酸化炭素やメタン、フロン、色々な気体が原因で、しかも発生源もバラバラ、これだけやればすぐ解決とならないのが難しさを増しています。

一般的に人はあまりに大きな問題に対面すると、思考停止になり何もしなくなります。問題を分解してこれをやるということが明確にできればいいのですが、やるべきことがあまりに多い。

例えば、環境のために電力節約しようと思って少し暑いけどエアコンを付けずに我慢したから、その分発散のためにドライブをたくさんして結果効果無しなんてことはよくあることです。

影響力の大きい産業が大きな力を持っている

色々な要因があるとはいえ、最も大きい要因は化石燃料や石油、それを使ってつくる電気が最も大きい原因です。

ここで問題なのは、それらを扱っている業界がとても大きな力を持っていて、すぐに止めるということができないという問題があります。もちろん、お金があるということはメディアにも影響力があるので、中々メディアとしても取り上げづらいという事情があったりします。

モチベーションを保つ難しさ

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個人が何かをすることによる成果があまりにも小さい

問題の構造自体の難しさにつづいて、それを解決する人間のモチベーションが続かないという問題があります。

人ひとりが車乗るの止めても0.0000003%しか影響無いしなと思ったりすると、自分の頑張りに無力感を感じてしまうこともあるのではないでしょうか。もちろんそれが全世界の人がやれば影響は大きいのですがそう思えないのが心情だと思います

無力感を感じると、救いようの無い気持ちや、憂鬱な気持ちになり、そういう状態になるのはいやなので、問題に注意を払うのを止めてしまいます。

マイナスなイメージが強い

温暖化対策というと、短期的なコストがかかるであったり、生活水準を下げて我慢しないといけないというイメージがつきまとっています。

人は現状を維持したいという気持ちが強いのと、損をしたくない、損失があるならみんな公平であるべきだという思いがあるので、対応が難しくなります。

途上国が先進国だけいい生活をしていて、こっちは温暖化のために我慢せよというのは許せない、先進国としては生活水準が下がるなんていやだという論理が働いて、世界的な合意もしずらいのもこのあたりの影響が大きそうです。

また、出て来る言葉もマイナスなイメージのものが多く、例えば炭素税というような言い方をすると”税”には搾取されるといったマイナスのイメージがあるので、それに影響されて反感を覚えられるということもあります。

問題が長期的すぎる

以前2000年問題というものがありました。西暦が2000になる時に様々なコンピューターが誤作動する可能性があるというのが話題になり、世界的にものすごいお金が動いて対応されたことがあります。結果ほぼ何も起きなかったのですが。

このように期日が明確に決まった問題であれば人のやる気は続くのですが、気候に関してはいつまでというものがない。

また、今まで何度もいつまでに対応しないと地球がもたないと言われてきましたが、大丈夫だったのもあり、おおかみ少年的な感覚で結局大丈夫でしょうというイメージを持たれてしまったりしています。

また、人間の心配ができる容量が決まっているのですが、その中身の割当は経済や仕事、テロや健康が優先されるようになっているので、中々将来の気候についてずっと心配してもらうということ自体に難しさがあります。

コミュニケーションの仕方に問題がある

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専門家による難解な説明といつも出てくるシロクマ

気候変動の問題にはバックグラウンドに科学的な問題があり、気候について危機感を持っている人に科学者が多いため、伝わりづらいという問題があります。

科学者なので事実をしっかり伝えてあげることが大事なので、数字などを元に伝えようとするのですが、結局それが人の感情的な部分には届かないから人が動かない。

じゃあ感情的な所にアプローチしようということで、皆様おなじみのシロクマが出て来るのですが、人は自分に影響のあることの方が大事なので、あまりに自分のことからかけ離れすぎて、特に何も感じないというのが現実だと思います。

ほとんどの人が遠くの戦争より自分のニキビの方が気になるので、シロクマの話しをしてもほぼ響かない。でも環境の問題を大切にしている人はそれが大問題だと思っているから、その話しを聞いても何も感じない人は許せない。。となって、温度差が広がっていくんだと思われます。

反対派が強い

グーグルで”温暖化”と検索しようとすると、”温暖化 嘘”というキーワードが提案されます。というくらい、温暖化を信じてない人が多いわけですね。

先程の科学者の話しが難解であるということにもつながるのですが、科学者はまだ明確になってないことははっきりとわからないというのが正義とされているので、説明の仕方があいまいになったりします。

一方で温暖化に反対をする人は議論が得意な人で、人を説得させるためであれば少し言い方が大げさになっても気にしないというスタンスだったりします。

そういう双方がテレビで論争をすれば視聴者にしてみれば温暖化否定派の方が正しそうに見えることは往々にしてあります。

そういったことから、二つの派閥の対立がより深まっていきます。

自分の知りたい情報だけが入ってきやすい環境

最近はSNSでの情報収集が増えてきていて、ニュースなどの情報に関して、自分の考え方と近いものばかりが見えてくるという傾向が顕著になってきています。結局人は自分の信頼している人や所属しているコミュニティで正しいとされている意見が正しく、それが他のみんなの意見だと思うようになっていくので、正しい情報が伝わるのが難しい状態になってきます。

周りの人に合わせておけば問題ない

これまで書いてきたように、もともと構造的に難しい問題で、それを解決するモチベーションを保つのが難しい状況の中で、コミュニケーションが正しくされていないという状態になっています。人は自分の行動を決める際に全て一から考えていくわけにはいかないので、このような複雑な問題に出合った時には、周りの人がやっているように行動するという面があります。

そうすると、身近に環境問題について何かしようとしている人がいる場合は何かしらのアクションをする可能性があるものの、いなければ特に何もしない。逆に否定派がいれば否定する。ということになっていきます。

それによって気候問題に熱心な人はこんな大問題なのに動かないダメなやつらという見方をするようになり、否定派との対立が深まります。

結果民主主義で決める政策としては進まないということになってしまうのでしょう。

解決するためにどうすればいいのか

この本の中に人を動かすのにうまく言っていた例として戦争時の軍隊の募集があげられています。でもこれもモラルにアピールしたからうまくいったわけではなく、個人間のプレッシャーであったり、信頼できる人からの情報発信や、社会規範、グループへの忠誠によって上手くいったものなので、そういったことを意識していく必要があります。

これは本に書いてあったことではないのですが、こういったことができるのがやはり企業なのではと個人的には思っています。

企業が自社の方針の中で明確にこれを減らすと決めれば明確な敵と期日が決められる。

社員にしてみれば自分が所属している組織のトップが言っている方針なのだから信頼できるだろうし、その会社に所属したいという気持ちがあればアクションにもつながるでしょう。

しかも今は温暖化の対策をすることが費用がかかることだけというわけではなく、初期費用がかかっても、継続的なコスト削減効果がある、信頼につながるといったプラス効果が出てきているので、合理的に考えても対応すべきという時代になってきていますしね。

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