ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスが立ち上げたエネルギー関連のVCのBreakthrough Energy Ventures (BEV) が実際に投資した会社について紹介します。
Breakthrough Energy Ventures (BEV)とは
このVCの立ち上げ時の日経のニュース(2016年12月12日)が以下なのですが、誰もが名前は知っているような方ばかりが関わっています。
米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏ら有力企業の経営者や著名な投資家20人がエネルギー分野に特化した総額10億ドル(約1150億円)超のベンチャーキャピタル(VC)を新たに設立することが11日、明らかになった。地球温暖化対策につながる革新的な技術の研究開発に取り組むベンチャー企業を発掘し、実用化を後押しする。
ゲイツ氏がエネルギーVC ベゾス、馬、孫氏ら出資 :日本経済新聞
その他、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾス、ヴァージン・グループのリチャード・ブランソン、アリババのジャック・マー、【TED動画】伝説の投資家ジョン・ドゥアー、グリーンテックに救済と利益を見い出すでも紹介したジョン・ドゥアーといったところです。
こういう人達がお金を出していることからも、このVCのスタンスは”patient capital.”ということで、20年といった単位で成果がでなくても世界を変えるためには辛抱強く投資をしていく方針です。このVCが実際に投資した会社が出てきたので以下の記事参考にご紹介します。
ダムが要らない揚水発電のQuidnet Energy
以前再生可能エネルギー100%を実現するための論点で紹介したのですが、100%再生可能エネルギーを実現するためには、
- 原子力や火力とCO2(二酸化炭素)回収貯留(CCS)を組み合わせて排出量の少ない(無い)安定的な電源を利用する
- 需要のピークをずらす
- エネルギーを貯める。揚水や熱、バッテリーなど
といった対応が必要になります。3つ目のエネルギーを貯める方法が重要になってくるのですが、現状有力な揚水でも数時間程度の需要にしかならないのと、バッテリーのリチウムイオンバッテリーもコストが高いといった問題があります。今回BEVから投資された2社はともにこれらのエネルギーを貯める問題に対応した会社です。
1社目のQuidnet Energyはダムや川がなくても水を使ってエネルギーを貯めることができる仕組みを作っている会社です。油田やガス田のシェール岩の小さい割れ目に水を入れてそこで圧力が生じて、エネルギーが必要になったタイミングでその力を使ってタービンを回してエネルギーをつくるという仕組み。
それによってコストが既存の揚水発電に比べて下がるうえに、ダムを作らないといけないということも無いため期待されています。
硫黄を使ったバッテリーを作るForm energy
2番目の会社はForm energyです。この会社は硫黄を使ったバッテリーを開発しています。これを使うことで長くバッテリーを貯めることができ、週単位、シーズン単位といった長さで貯めておくことができるようです。
そしてコストが安く、リチウムイオンバッテリーが現$200/kWhで安くなっても$100/kWhと言われている中で、この方法であれば$10/kWhまで下げることができると想定しているようです。
そして硫黄自体はガスや石油の生成過程で派生する気体でたくさんあるということから、この方法が実現されればバッテリーが大きく広がっていく可能性があります。
参考資料
To hit climate goals, Bill Gates and his billionaire friends are betting on energy storage