ダイベストメントは効果があるのか？

化石燃料関連の企業など環境に悪影響を与える可能性のある企業から投資や融資を引き上げていくダイベストメントが広がってきています。どんな効果があるのか、本当にいい手段なのか色々な考えがある話なので整理してみます。

ダイベストメントとは

ダイベストメントとは環境（environment）、社会（social）、企業統治（governance）に配慮している企業を重視・選別して行う投資であるESG投資の中の一つで、環境に悪影響を与える企業から投資や融資を引き上げることを言います。

ちょうどこの記事を書いている今日日経新聞の1面にも出ています。

世界的に異常気象が相次ぐなか、気候変動リスクの回避へ投資マネーが動き出した。化石燃料などに関連する企業の株式や債券を売却すると決めた投資家は世界で900超、資産規模は約700兆円にのぼる。融資を停止する動きも広がっている。気候変動を助長する事業を手掛ける企業は、規制などの関係で業績悪化の可能性がある。そうした企業を避けると同時に、市場の圧力で事業転換を促していく狙いもある
脱化石燃料へ株売り圧力　世界900超の投資家表明　事業転換促す　：日本経済新聞

ダイベストメントに対しての論点

ダイベストメントに関しての論点は以下のようなものがあります。

株を売っても当面その企業に影響はないのではないか
株価は本当に下がっているのか
投資し続けてその企業を変えていく方がいいのではないか

ダイベストメントされることでその企業にどんな影響がでるのか

投資という観点でいうと、ダイベストメントされることによって株価が下がり、市場からの圧力で環境へ悪いような業務を減らしていくというような流れです。株価が下がっても新しく調達しない限りは企業のお金という観点では何も影響がないので、短期的には特に影響はないです。

さらに誰かが株を売るということは誰かが買っているということなので、ただ株のオーナーが変わっているというだけです。売る側の人は手放せるかもしれないですが、社会全体としてのリスクは減らないという点もあります。

長期的には株価が下がることで、会社としての評価も下がり、人が取れなくなったり、資本コストが高くなるという点があるので、長い目で見れば効果が出てくるのでしょう。

ダイベストメントの一番のメリット

投資を引き上げられる企業への影響よりもより効果のあることとしては、投資を引き上げた側が環境によいことをしているというメッセージを発することができるというのが大きなメリットとして出てきます。そういった所が増えていくと、結果としてメディアでも取り上げられ、政治も動いていくかもしれないと考えるとそういった動きが出てくるのが一番よい流れなのではないでしょうか。

ダイベストメントで株価は下がるのか

そもそもダイベストメントをしたことで本当に株価が下がるのかもわからないという意見もあります。ただ、先述の日経の記事にもかいてありましたが、エネルギー関連の株は他の株価の値動きに比べると見劣りするようです。また、How divesting of fossil fuels could help save the planetの記事に実際にダイベストメントをされたことによって株価が下がっている、特に発表された際には大きく下がっているというような調査をしているデータもあります。

逆にいうと、ダイベストメントされるであろう銘柄を空売りしたら儲かるんじゃないでしょうか。。

投資し続けてその企業を変えていく方がいいのではないか

この点が最もダイベストメントのデメリットとなりえる論点なのではと思っています。

Stockholders are the only ones who can truly engage the company, she says. “If you don’t own shares you’re not eligible to vote with a proxy, you can’t elect boards of directors, you can’t vote on share proposals. You are completely without a voice.”
Is Fossil Fuel Divestment a Wise Move? | University Business Magazine

この文章を読んでとても納得感がありました。株主じゃないとその企業に関わることができないわけだから、環境によくない会社を変えるとしたら機関投資家のような影響力の大きい会社が改善させていくというのがベストなのではと思います。