マルイの統合報告書等の環境関連のPRがわかりやすい

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最近統合報告書として財務報告だけではなく、SDGsに関わるような非財務の情報も合わせた報告書を作成する企業が増えてきています。どういったものを作るか試行錯誤している企業も多いので、わかりやすい報告書を見ていきます。まずマルイの統合報告書を含めた、環境関連のPRの仕方がとてもうまく、わかり易かったので紹介します。

マルイは今どんな会社なのか

今マルイは百貨店型のビジネスモデルで売れた分だけ仕入れて売上にするというモデルから、ビジネスモデルの転換出店する店舗が家賃を払う形に急速に移行していて、ビジネスモデルの転換というページを見ると2015年に3%だった定借化率を2018年3月期には74%まで増やして、2019年3月期には94%にする計画でいます。

そのため、例えばマスブランドに限界、金の卵育てる 丸井やワールド、アパレル不況打破への記事にあるように、BASEに出店しているお店が出店できる場所を渋谷マルイの1階フロアに用意し

出店者は、1日当たり3万5000円ほどで場所を借りられる。渋谷マルイを営業する丸井グループが、出店や接客を支援する。ネット通販を主力とする小規模ブランドにとって、都心の一等地で認知度を高める絶好の機会だ。

新しい形の売り方をどんどん試しています。

また収益としてはエポスカードを中心としたフィンテック事業が主になってきていて、83期四半期報告書では19年3月期第3四半期で営業利益が305億円のうち、フィンテック事業が261億円と75%近くを締めています。

マルイの環境視点での取り組み

そもそもこの記事でなぜまずマルイを選んだかというと、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」というものがあり、そこで特に多くの運用機関から高い評価を得た「優れた統合報告書」として選ばれているのが、味の素株式会社、コニカミノルタ株式会社、オムロン株式会社、伊藤忠商事株式会社、株式会社丸井グループ です。また、それとは別に事業を100%再生可能エネルギーで調達することを目標にしている企業が加盟するRE100に加盟している日本企業が、リコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス、ワタミ、イオン、城南信用金庫、富士通、ソニー、丸井グループといった会社になっていて、その両方に含まれている丸井グループだったので環境関連のPRに優れているのではと思ったのが理由です。

その丸井グループはRE100だけではなく、環境関連でよく話題にあがるイニシアチブほとんどに名前をあげています。詳細は省きますが、CDPの気候変動Aリスト企業認定、SBTイニシアチブ認定を取得、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)賛同を表明などです。

具体的な事業としても、今までの膨大なデータの蓄積から、靴の廃棄がサイズが合わないことが原因であることが多いことを把握し、「ラクチンきれいシューズ」として一人ひとりに合わせたサイズを作るブランドを展開する、廃棄量を減らすためにシェアすることを考え、ドレスレンタルサービスの「DRENi」を始めるなど環境のことを加味したことを行っています。

具体的にどのようにアピールしているのか

上記方法をどうアピールできているのかという観点で見てみます。HBRの2月号の社会貢献活動を上手に知らしめる方法に記載のあった、企業の善い行いを重ねても認められないということを避けるには

以下のオーディエンス4種類が重視する点に絞ってそれぞれメッセージを発信することである。

  • 企業監視機関(ソーシャルメディア活動家、NGO、政府機関など)
  • 従業員(勤務先に誇りを持ちたいと考えている)
  • 投資家(企業の価値と命運を最終的に左右する)
  • 顧客と一般市民(企業の収益源であり、ブランドアイデンティ地の決定権を握る)

ということがまさに実行されているなという印象です。

まず共創サステナビリティレポートの中にロジカルに全体像を把握しやすい絵があったうえで、

丸井共創サステナビリティレポートGreenbusiness

丸井共創サステナビリティレポートより

詳細を知りたいような監視機関のためにESGデータブックとして詳細データをわかりやすいリンクの場所においてあります。

従業員向け

従業員向けという意味では共創サステナビリティレポートを見るとわかるように、ビジョン2050の「ビジネスを通じてあらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」ということからはじめ、トップが本気で発信しているのがわかるので、従業員には十分伝わっているのだろうというのがわかります。

投資家向け

投資家向けとしては機関投資家説明会資料・動画の所に最初にESG関連の取り組みと株価について載せていてしっかり投資家の欲しいニーズに答えています。

丸井グループESGと株価推移

共創サステナビリティ説明会PDFより

本筋とは関係ないですが以下のスライドがとてもわかり易かったです。

カード収益構造

2019年3月期第2四半期決算説明資料より

クレジットカードの手数料が引き下げられるリスクに対しての回答の資料です。投資家としては安心するかもしれないですが、投資家でない自分がみると複雑な気分にはなります。体に悪いものはお客さんが欲しがるから売りはするけど、それはやめた方がいいんだという教育はしていくというホールフーズのようなことを丸井でもしたらいいのにとも思います。

一般消費者向け

一般消費者向けという意味では結果として環境につながるということでシェアリングサービスを広げてはいるけど、環境についてのアピールを全面に出しているというわけではなさそうです。

NewImage

丸井Webサイトトップページより

ただ、環境に関しての感度が高いユーザーもいるので、そういうユーザー用に別のページも用意しています。

マルイ|環境・社会貢献活動 「マルイミライ」

環境に加味した活動をしていること、わかりやすい資料であることは前提として、それぞれの関係者にわかりやすい形で伝えていくことの重要性がとても感じられる資料でした。

参考資料

マルイ ビジネスモデルの転換

丸井グループ 83期四半期報告書

丸井グループ 共創サステナビリティレポート

丸井グループ ESGデータブック

丸井グループ 共創経営レポート(統合レポート)

マルイ|環境・社会貢献活動 「マルイミライ」

マーク R.クラマー(2016) 社会貢献活動を上手に知らしめる方法 HBR2月号

マスブランドに限界、金の卵育てる:日経ビジネス電子版

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」

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