100%再生可能エネルギーを目指す企業が加盟する「RE100」が加盟企業の数を増やして来ていて、これから多くの企業が目指していく流れがあるのですが、本当に再生可能エネルギー100%を目指すには課題がたくさんあるので、どのような論点があるのか整理してみます。
サマリ
再生可能エネルギー100%を目指す上での難しい点は太陽光や風力が不安定な電源であることです。それをカバーするためには、配電網をかなり広げる、電源を貯めるといったことが重要になります。排出量を実質ゼロにするために原子力や火力とCO2(二酸化炭素)回収貯留(CCS)を合わせて使うといった方法も現実的には必要です。
再生可能エネルギーの技術的・経済的問題点
再生可能エネルギー100%を実現する際の論点がわかりやすく整理されている記事があったので、その内容を紹介します。
A beginner’s guide to the debate over 100% renewable energy
A beginner’s guide to the debate over 100% renewable energy – Vox
アメリカの話なので少し日本と違う部分もありますが、大枠は変わらないです。環境に負荷の無いエネルギーを進めるためには、
- 電気からの二酸化炭素排出量を減らす
- 他のエネルギー(輸送や加熱、産業での利用)を電気に寄せる
という流れが必要になります。2番目の例としては例えば電気自動車にするなど。こういったことがあるので、電気の需要自体は更に増えていくことが予想されていて、今世紀半ばには150%に増えるとも言われています。
なので、排出量を減らす、再生可能エネルギーを増やすということが大事になってくるのですが、再生可能エネルギーを増やすにあたっての問題点が技術的、経済的観点からあります。
技術的な問題としては、再生可能エネルギーの中心となる太陽光や風力は安定では無いということ。晴れの日もあれば曇りの日もあるし、風がある日もあれば、弱い日もある。そのことから以下のような点が難しい点としてあります。
- 必要以上に電力が出来てしまう場合と、足りないという場合が起こり得る
- 週、月、季、年という単位で変動がある
- 時間・分単位で急激な需要の変動に対応しないといけない
という点です。
カリフォルニアでのある一日の電力需要と再生可能エネルギーでの発電量の差のグラフが上図のような形になっています。再生可能エネルギー以外で必要になる電力量が全然変わってくるのがわかります。日中は余剰になる可能性があるけれども、多くの人が家に帰ってくる時間には太陽も沈み全然足りなくなる。電力は安定供給が重要な中でその難易度が年を追うごとに上がってくることになります。
また経済的な観点としては、再生可能エネルギーが広がるほど平均的な電気の価格に比べて、再生可能エネルギーの価格が下がってくるというものがあります。
MITの研究で上図のような太陽光が広がる率と価格の推移のグラフが出ています。太陽光はどんどん価格が下がるのに対して全体の価格はそこまで下がっていません。
背景にあるのは、太陽光や風力の設備で電気を作れる際は他の設備も同時に作れる、逆に作れないときはみんな作れないということから、作れる時の価値がどんどん下がる。
一方で太陽が出ていないときは他の安定的な電源に頼るしかないので、そっちの価値が相対的に上がる。そのことから、再生可能エネルギーで利益を出すのが難しくなってくるという点があります。
電気による排出量源と安定供給を両立するために必要なこと
二酸化炭素排出量を減らし、かつ電気を安定供給するためには以下のような対応が必要になります。
- 原子力や火力とCO2(二酸化炭素)回収貯留(CCS)を組み合わせて排出量の少ない(無い)安定的な電源を利用する
- 需要のピークをずらす
- エネルギーを貯める。揚水や熱、バッテリーなど
ただ、この3つ目のエネルギーを貯めるという点については今現状の最も有力な揚水でもアメリカでは数十分から数時間程度の需要にしか対応できない現状があります。
上記のような方法があるものの、一方で批判としてあるのが原子力などをいつまでも使うのかという問題があります。排出量がゼロではなく再生可能エネルギー100%を目指すべきだという話しです。
再生可能エネルギー100%を実現するために超えるべき課題
火力や原子力+CO2(二酸化炭素)回収貯留(CCS)を使わずに再生可能エネルギーだけで対応するためには以下のような課題を解決する必要があります。
- 太陽光や風力は発電効率が低いので大量に作られすぎる
- 配電網を広くつなげる必要がある
- 電源を貯めるストレージが指数的に広がらないといけない
2点めの配電網を広くつなげるという点ですが、これは発電できる地域が広ければ広いほど、陽の当たる所、当たらないところ、風の吹く所吹かないところ両方が含まれてくるのでリスク分散ができるということです。
3つ目はバッテリ−の価格がまだ高いので、これを以下に安く大量に作れるようになるかという所がポイントになってきます。