製品のサービス化(Product as a service)とは何か

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環境問題を解決するために企業が取り組めるビジネスモデルとして製品のサービス化(Product as a service PAAS)があるので、その紹介をします。

製品のサービス化(Product as a serviceとは

メーカー企業が製品を作って、消費者に売ったら終わりというのが通常の流れですが、製品のサービス化(Product as a service以下PaaS)では、メーカー企業が製品を所有したままで、それを利用するサービスを顧客・消費者に提供する形のビジネスモデルです。よくあるビジネスで言えばリースがそのような形態になります。例えばコピー機などは機械はリースで、利用した分だけカウンター料を払うというモデルです。

なぜPaaSが環境問題の解決につながるのか

これだけ聞くとこのビジネスモデルがなぜ環境問題に関わりがあるのかわからない面も多いと思いますが、根本にあるのはサーキュラーエコノミーとは何か〜サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略概要〜の記事でも書いた通り、資源が有限であったり、温暖化が進んでいる中で、資源をとって、製品にして、廃棄するという「取って、作って、捨てる」というモデルには限界がありという考えがあります。

PaaSの一番の特徴はメーカー企業が製品を所有したままという所にあります。

例えば温暖化の観点では温暖化の大きな要因であるHFCとはで書いたように、冷房や冷蔵庫に使われている冷媒に使われている気体のHFCが温暖化効果が非常に高い気体で、しかも廃棄する時に最も発生するとも言われています。こういった大きな影響があるものの処分を一般の消費者に任せるのではなく、メーカー側が責任を持ってリサイクルなどをすれば、環境への影響を減らすことができます。

冷房でいえば、ユーザーが必要なのは「涼しさ」というサービスであって、冷房という機械ではないので、「涼しさ」を提供することで、毎月お金をもらうという契約にするようなモデルであれば、もしさらに環境によい冷媒装置ができれば、メーカーの責任でそれに取り替える、ということもできます。

PaaSの事例

製品のサービス化(PaaS)の事例は増えて来ています。例えば、タイヤメーカーのミシュランはタイヤを販売するのではなく、走行距離に応じた料金をリース費として払うTire as a serviceというサービスを提供しています。

また、フィリップスではユーザーが求めているのは電球ではなく、明るさだということで、LED電球をリースにし、メンテナンスなどのサービスも合わせたリースサービスを提供しています。

PaaSによるメリット・デメリットは

実際に製品のサービス化(PaaS)を導入することで、メーカー、ユーザー側にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。他の環境問題でもそうなのですが、企業側にしてみると短期的なメリットが無いと結局続かないので事前に考えておく必要があります。

メーカー側のメリット・デメリット

メーカー側のメリットは以下のようなものがあります

  • ユーザーとの定期的な接点ができる
  • 上記ポイントと合わせて付帯サービスを追加で提供できる
  • 製品の機能向上につながる可能性がある
  • 環境への負荷を減らすことができる

今まで買い切りで終わっていた関係を定期的なコミュニケーションを取れるようにするのは売上増加のために重要なポイントとなります。また、製品の機能向上させることによって、メーカー側が利益を増やせるインセンティブが働くことになるので、結果として機能向上につながることもありえます。一方でデメリットや検討しておくべきポイントとしては

  • 既存のモデルよりも売上・利益が減る可能性がある
  • 顧客サポートが労働集約的になる可能性がある
  • ユーザーが所有しないため、雑に扱われる可能性がある

金額の設定によっては売上・利益が減ってしまう可能性があるので、価格の設定が重要になります。メリットの部分の他のサービスにつながるための費用として減った分を見れれば問題ないとは思うのですが。

事例としては、インターフェースというカーペットの会社がカーペットの清掃やメンテナンスや、毎月の点検で擦り切れたもの、全体の10〜20%分程度のみ交換するサービスを提供していたのですが、採算がとれずそのサービスは提供しなくなってしまったようです。

また顧客サポートが労働集約的になってしまう点については、IoTの技術などを使ってデジタル化することで、人が現地に張り付く時間を減らすなどの仕組みを考える必要はありそうです。

ユーザー側のメリット・デメリット

ユーザー側のメリットとしては、通常のリースと同様のメリットがあり

  • 高額の機器を購入する必要が無い
  • メンテナンス等の隠れたコストが無いので完全にコストを予測できる
  • 自社で管理・メンテンナンス・廃棄をする必要が無い
  • 環境負荷の軽減に貢献ができる

というものです。デメリットとしては製品を保有するよりは最終的には高くなる可能性がある点があります。ただ、そこはメリットと合わせて検討すべき点かとは思います。

PaaSはどのような業種に向いているのか

PaaSはコピー機、自動車、トラック、飛行機、家具、事務用品、冷房、カーペット、電灯、薬品など多種多様な業種で広がってきています。要素別に整理すると、

  • 廃棄に絶対的な責任を持つ必要があるもの:薬品・冷房など
  • 製品の効率がよくなる余地が大きいもの:冷蔵庫など家電
  • 初期購入コストが高いもの
  • レアメタルの回収・リサイクルの価値が高いもの
  • 代替手段が出て来る可能性が高いもの

などはサービス化が向いているものではないでしょうか。個人的には環境の観点で言うと、冷蔵庫や冷房は利用中の電力使用量や、冷媒によるCO2排出量が多いものなので、リースにして、技術革新が起きたらメーカー側が更新してくれるようなサービスが欲しいです。

PaaSのサービスではないですが、冷房では部品を新しいものに入れ替えるというレトロフィットメンテナンスというサービスが出てきているので、こういった仕組みがより広がっていくといいですね。

参考資料


ピーター・レイシー (著), ヤコブ・ルトクヴィスト (著), 牧岡 宏 (翻訳), 石川雅崇 (翻訳) サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略|日本経済新聞出版社 (2016/11/23)

0
ポール ホーケン (著), L.ハンター ロビンス (著), エイモリ・B. ロビンス (著)自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命|日本経済新聞社 (2001/10)

Leasing Society|European Parliament Think Tank

ダイキン レトロフィットメンテナンスプラン | ダイキン工業株式会社

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