非化石証書とは〜再生可能エネルギーを増やせるのか

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企業がCO2排出量がゼロの電気を調達しようとしても、再生可能エネルギーの主流になっている固定価格買取制度(FIT)だとCO2がゼロとは見なせません。

この状態を解決できる可能性がある非化石証書というものが売り出されるため、その内容について紹介します。

非化石証書とは

非化石証書とは、固定価格買取制度(FIT)の電力のCO2排出権ゼロの価値を別出しにして証書として売り出すという仕組みです。企業としてはFITや火力発電の電力と非化石証書をセットで使うことで、CO2排出量がゼロとみなすことができるようになります。

なぜFITは排出量がゼロとみなされないのか

そもそもなぜFITやは再生可能エネルギーなのにCO2排出量がゼロではないのでしょうか。一般過程の消費者の電気代の明細に再生可能エネルギー発電促進賦課金として今であれば2.64円/kWhが請求されています。その金額が排出量ゼロの分の価値とみなされ、それは全消費者が負担しているから、FIT電力を売っている電力小売りも、それを買った企業もCO2排出量がゼロとは言えないという建付けになっています。

非化石証書の売上金額が国民が負担している再生可能エネルギー発電促進賦課金から差し引かれることになるので、非化石証書が広く利用されることで国民の負担も減っていくことになります。

非化石証書の目的は

非化石証書の目的としては電力小売会社向け、消費者・企業向けの両面があります。まず電力小売会社はエネルギー供給構造高度化法という法律で、非化石エネルギーの割合を2030年度に44%以上にしないといけないと決まっているので、その達成をできるようにすること。消費者向けには、FIT電源の国民負担を減らすため。企業向けとしては、非化石価値(主に再エネ)の電気を使いたいというニーズに応える。というものがあります。

発行される量や金額はどうなるのか

発行の仕方としてはオークション形式になり、計画では2018年5月上旬に第1回オークションが実施される予定になっています。量としては、2017年4月〜12月に発電されたFIT電気で約50TWhで国全体の発電量の5%程度になります。

方式としては、高い入札価格を提示した事業者から順に落札できるマルチプライス・オークション方式になっていて、下の図のように最低入札価格は1.3円/kWhとなるようです。

非化石証書最低価格

マルチプライス・オークション方式による入札例 資源エネルギー庁「非化石価値取引市場について」より

排出量ゼロとしてどこまで認められるのか

利用する企業側としては、排出量がゼロとしてどこまで正式に認められるのかが気になる所になります。利用する企業側の検討ポイントと、CDPやRE100といった国際的な機関でどこまで排出量ゼロとして認められているのかを整理します。

利用する企業側の検討ポイント

利用する企業側としては、非化石証書の金額分を負担することになるので、電気代が大きく増えるのではという点と、利用する電力自体を再生エネルギーにこだわるかという点がトレードオフになってきます。

恐らく安い火力発電+非化石証書の組み合わせで通常の電気代とそんなに変わらないというプランを出してくる電力会社が増えてくると思われます。

一方で本当に再生可能エネルギーだけを使いたいというニーズにも応えるために、FIT電気と非化石証書の組み合わせで販売をする会社も出てくるので、企業の方針に応じて選んでいく形になるのでしょう。

CDPやRE100で認められるのか

日経エコロジーの「非化石証書」で再エネ調達の記事内でCDPが認めた「非化石証書」として

注目すべきは2017年12月、CDPが非化石証書の調達量を「再エネ」と報告することを認めたことだ

という点はこれから環境への対応をアピールしたい会社としては大きい点になります。一方で

RE100での利用は、今後、詳細に確認する必要があるため、結論が保留になった

ということなので、こちらも動向が気になるところです。

参考文献

非化石価値取引市場についてー2017年11月28日資源エネルギー庁

「非化石証書」で再エネ調達 日経エコロジー2018年2月

シリーズ「電力システム改革の真の貫徹」を考える 第7回 電気のCO2排出削減政策としての非化石価値取引市場について|自然エネルギー財団

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