ニューヨークの環境問題への取り組み方が素晴らしい

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ニューヨークは環境問題の対応が計画的にされていてとてもうまく行っています。その考え方、進め方が他の地域・会社でも活かせる部分がたくさんあるので紹介します。

この本のニューヨークの事例の部分を中心に紹介しています。

サマリ

都市をよりきれいに、市民を健康にし、仕事を増やし、生産性を高めるということを目指した結果が温暖化改善につながるという考え方のもとで、ブルームバーグ元市長がPlaNYCという計画をたてています。建物からの排出量が75%であることを把握し、その改善のために法律も整備していく、対策を立てることで雇用も増やしていくということを実現しています。

環境問題への現実的なアプローチの仕方

この本の作者の一人のブルームバーグさんは、名前からもわかる通りブルームバーグ社を作った方で、2002年〜2013年までニューヨーク市長をしています。その際にニューヨークが2040年までにさらに100万人が増えると予想される中で受け入れられる都市にすること、洪水の被害などを受けやすいニューヨークが世界に先駆けて気候変動への対応をすることを目指して、PlaNYCというニューヨークを持続可能な都市にする計画を立てています。

環境問題への考え方

以前の記事でも書いたのですが、環境問題の難しさは長期的な問題すぎるという点があります。この本の表現を借りると

人は100年後に地球がどうなるのか、ではなく今年自分の家や、仕事、コミュニティーに何が起こるのかが気になります。

だから、100年後の話しをするのではなく、例えば暖房用のボイラーの重油を良いものに変えて健康によくしましょう、屋上を白くしたり、ソーラーパネルをつけることで、電気代を減らし、雇用も増やしましょう。その結果温室効果ガスの排出量も減らし環境に良くなります。

という言い方をすることで市民を動かすことに成功しています。

測れないものは管理できない

ビジネスの世界でよく言われていることですが、

If you can’t measure it,you can’t manage it

測ることができなければ、管理することが出来ないというもの。

その原則に則って、最初にニューヨークでの温室効果ガスの排出量を調べています。結果として、75%の排出量が建物からだったことがわかっています。

世界の平均や国の平均をしっても仕方なく、自分の地域、会社などの現状を知るということがまず最初の一歩として大事ですね。

他の都市のアイデアはいくらでも借りてくる

色々な都市が環境のために様々なアクションを取っています。それを利用しない手はない、ということで色々な事例を調べ、真似する所は取り入れています。

例えば、ボゴタやクリチバのバスのシステム、パリやコペンハーゲンでの自転車の活用事例、ベルリンのグリーンルーフ、ロンドンやシンガポール、ストックホルムでピーク時に道路の交通料を上げる仕組みなどを学び取り入れようとされています。

ニューヨーク市での対応例

エンパイアステートビルでの対応例

排出量の75%が建物からなので、建物での対応例をあげてみます。エンパイアステートビルでは、エネルギーの利用量を40%削減しています。かけた改修コストが2000万ドルで、毎年のコスト削減効果は400万ドル。5年で改修できる金額です。

具体的には6,500枚ある窓ガラスを全て断熱構造にする、エネルギー管理システムを入れる、自然光を最大限利用できるようなレイアウトにする。

などがあります。アナログなんだけど確かにそうだなと思ったのが、エアコンの制御に関係する温度計を外壁から離れた所に置くというもの。なぜかというと、外壁に近いと温度が夏だと現状以上に高く、冬だと低くなり、エアコンの消費電力が増えてしまうというもの。

より環境にいい重油にする

冬場にオイルヒーターを使っている所が多く、その重油の質が悪いために、二酸化硫黄が多かったり、スモッグが多く発生していたようです。そのため、より質の良いものに変えることで空気の改善に成功したようです。

方法としては、法律で禁止するとともに、その設備を変えるための低金利ローンを用意するなどすることで自発的と法的な強制の両面で進めていったようです。こういったことをできる権限を市に与えるということがとてもポイントになりそうです。

政策による方向づけ

建物による排出量を減らすうえで問題になってくるのが、ビル全体の設備を変えなければ根本的に解決しないが、光熱費を払っているのはそのビルに入っているテナントなので、ビルオーナーに変えるモチベーションが無い。というもの。

それに大して、エネルギーの利用量の収集を簡単にできるようにし、テナントが有効な手段を取れるようにしたそうです。テナント側からオーナーに設備のアップグレードを要求してもよいように法律も整備したようです。

そのほかにも、学校、病院など公共の場所がお金が無いために改修が進まないという問題があったため、Property Assesed Clean Energyという、低コストで長期間ファイナンスできるような仕組みも利用しています。

また、屋根が暗いことで熱を吸収してビル内の温度が上がることから、屋根を白くするというNYC°Cool Roofsという活動もしていて、それによって雇用の創造もしています。

上記例はほんの一部なのですが、この例からわかるように、市などの地方自治体に権限を渡し、市民の自主的な改善と政策による後押しを両方効率的にしていくことによって、スピードをあげて環境問題に対応していくというのは理想的ですね。

参考文献

Michael Bloomberg ,Carl Pope|Climate of Hope: How Cities, Businesses, and Citizens Can Save the Planet|St. Martin’s Press (2017/4/18)

PDF:PlaNYC 持続可能な都市に向けたニューヨークの長期計画

PDF:PlaNYC(ニューヨーク市の総合計画)の翻訳(2012年5月7日更新)

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