環境の問題を考えるにあたって、短期的では無く、長期的な視点で世界を見る必要があります。未来がどうなっていくかを考えるにあたって、超良書「2025 今後40年のグローバル予測」を紹介しつつ、でもあまりに悲観的な未来なのでその未来を避けるためにできることを書いてみます。
本の概要
40年先の地球を大量のデータを元にモデル化し、予測した本です。主な結論としては、
- 人口は2040年に81億人でピークに足し、GDPの成長は予想されていたよりも低くなる
- 気候の観点では2052年時点では壊滅的なレベルにはならない、しかし、21世紀なかばには歯止めがきかなくなり、人類は大いに苦しむことになる。
- GDPの大部分を気候変動などの問題の予防、回復、解決のために投資することになり、財・サービスへのと合うしは2045年にピークになる
といった内容。全体的に悲観的な内容です。私個人的な話しですが、出口治明さんの本や、オススメされている本がとても素晴らしいので、よく読んでいるのですが、彼がこの本をやはり薦めていて、そのコメントとしては、
『2052~』は、およそ考えられる悲観論のすべて、考えるポイントのほとんどすべてを網羅している素晴らしい本なのです。この本さえ読んでおけば、今後40年間に起こるチェックすべき項目を見逃すことはないでしょう。もし結果が良ければそれでよしとすればいいのです。大雨を予測し、晴れていたらラッキー、といった感じでしょうか。
世界の人口、GDPはどうなっていくのか
都市化が進むためそんなに人口は増えない
2050年に世界の人口はどうなっているのでしょうか。国連の予想では、2050年に98億人、2100年は112億人とも言われていますが、それに対して、この本での予測は2040年に81億人でピークというもの。なぜ人口の増加がそこまでではなくなるかというと、世界で都市化が進んでいき、都市化が進むと出生率が急激に下るから。
都市においては、子どもが増えるということは、農作業の手伝いをしてくれる労働力が増えるのではなく、食べる口が増え、教育でかけるコストが増えるということ。そして、子どもの死亡率も下がってくるので、第一子が無事成長して、家族に満足をもたらしてくれるというもの。
環境問題視点での都市化のメリット
都市化は環境問題の視点ではいくつかメリットがあります。
都市に住むと長距離通勤をする必要が無くなるし、恐らく家のサイズも小さくなるので、一人当たりの音質効果ガスが少なくて住むことがまずひとつ。そしてもうひとつは天災から守る対策を取るにも、まとめてその地域の対策をすればいいのでコストが安く住むという点。
アメリカはCO2排出量が多い背景にあるのはやたら広い家と長時間での車通勤というのがあるので、このメリットは確かにありそうです。
GDPの増加ペースが落ちるのはなぜか
GDPの成長は思ったより遅くなると予想していて、その理由としては人口の増加ペースが遅くなるのが一つ。そして、生産性向上のスピードが下がるからというのがもう一つです。先進国ではすでに生産エイが高く、介護やサービスが中心になると、生産性が上がりづらくなるのと、異常気象によって農業も計画をたてずらくなるため生産性が下がってくる。そして世界のほとんどの地域で一人当たりの消費の成長が鈍るので、社会の緊張が高まり、紛争が増え、さらに生産性が下がってくるというスパイラルに入っていきます。
温暖化の状態は2052年にはどうなっているのか
では環境の問題はどうなっているのか。本文から引用すると
今後数十年間で社会投資が増え、資源と気候の問題は2052年までは壊滅的なレベルには達しない。しかし、21世紀なかば以降気候変動は歯止めが聞かなくなり、人類は大いに苦しむことになる。
というもの。本来であれば世界中の国が20年間にわたってGDPの5%を環境のために使えば今ある環境問題は解決するはずだが、それをするとは思えないというのが筆者の予想です。
温暖化問題が深刻化した際に起きる世界の状況
パリ協定でも言っているように、世界の気温上昇を2度で止められるかがとても重要なポイントで、2度上昇することで起きることとしては
干ばつ多発地域では干ばつが、降雨量の多い所はさらに増加する、異常気象が多発し、氷河と北極海の海氷が解け、海面上昇し、海水の酸性化がすすむといったところ
さらに2.8度を超えるとツンドラが溶け始め、凍土に閉じ込められたメタンガス(二酸化炭素の25倍の温室効果ガス)が大量に放出され、気温がさらに上昇し、ますます解けていくという自己増幅に入っていく。
なぜ環境対策は進まないのか
今の資本主義、市場主義の世の中では、短期志向であるため、長期的な幸せを築くための合意ができずらいから環境細作は進まないというのが筆者の主な主張です。
環境問題への対応が遅れるにつれて、気候変動によるダメージから修復するための「強制的な投資」と将来のためにCO2の排出量を減らす「自発的投資」が必要になってきます。
いままであればGDPのうちの24%を占めていた投資が、自発的投資に6%、強制的投資に6%必要になってくると想定され、そうするとなると財・サービスから投資に回すしか無くなる、つまり増税をする必要が出て来る。そのことに対しての抵抗がなくなるには、環境の問題が全ての人の目の前で起きている事象にでもならない限り同意されないだろうと。こういった問題を解決することができるには
民衆の意見を無視できる未来志向の独裁体制だけだろう
だからこそ中国の方がアメリカよりもよっぽど早く対応できる可能性はあるだろうと言っています。
じゃあ企業はどうなのかというと、一部の企業は将来のために対応するかもしれないが、ビジネスの観点からすると、気候安定に投資しても利益が得られるのがあまりに遠い未来だから、短期的に評価される市場の中では難しいだろうと。
企業から変えることができるはず
全体的に悲観的な予測をしているこの本の最後では、著者は
私の予測が当たらないよう、力を貸してほしい
と呼びかけています
そのために企業、個人、政策、イノベーションと色々な観点があると思いますが、一番早く結果が出せるのがやはり企業が大きいと思っています。例えば、グーグルはもうすでに2010年からカーボンニュートラルになっていて、2017年には100%リニューアブルエナジーにしようとしていたり、ウォールマートは2010年までの5年間で巨大トラックの60%の石油の節約に成功していたり、インターフェース社は温室効果ガスを83%減らしながらも売上を60%以上増やしていたり、企業が決めれば短期間で結果を出している例はたくさんあります。この本で言っているある種独裁体制に近いことが一番やりやすいのが経営者なはずです。仮に市場主義が問題だったとしても非上場会社であれば気にする必要もないですしね。